第3回里山シンポジウム 第1分科会「里山と政策」
第1回勉強会 みどり環境税
日時 :3月23日(木) 午後6時より9時まで
会場 :千葉市中央コミュニテイーセンター5F 51講習室
参加者:14名
目的:緑の受益者である県民全体による広く薄い税負担による 県土のみどり環境、みどり資源の保全・育成方策について、お話 しを伺いました。
講師:小林 進さん 千葉県林務課
内容:
千葉県の森林率は全国平均の半分、31.5%と低く、所有別からは89%が私有となっている。所有規模では、小規模かつ分散的であり、効率的な林業経営には支障となっているなど、都市化の進展による減少が顕著である。こうした林業家の林業離れは、木材価格の下落とあいまって、森林の手入れ不足を招き荒廃が進んでいる。
一方、森林の多面的機能の評価が認識されてきつつあるが、依然県民全体が、その重要性や担うべき主体は林業家であるとの考えが多く、広範な都市住民や非林業関係者が享受している森林の機能に応分の負担をする事に対する理解が進んでいない現状がある。
これらを踏まえ、千葉県では、地方分権一括法の流れによる他県の独自課税等の情況をも鑑み、地方税法の法定外目的税の徴収よりも、集税コストや手続き面から県民税への上乗せを検討している。ちなみに県民1世帯当たり年間500円とすれば、10億円程度が想定される。
この税による森林の環境整備には、まず広範な県民の公共財・環境資源としての森林への理解が進展する基礎が必要な事、次に使途について、有効な担い手とコンセンサスが形成される事が必要である。
第2回勉強会 環境税
日時:4月7日(金)午後6時〜9時
会場:千葉市生涯学習センター小研修室
参加者:18人
目的:二酸化炭素を排出するエネルギーに課税することで、環境負荷の少ない社会経済システムを実現しようとする環境税の基本的な考え方を学ぶ。
講師:山田 章平さん 環境省総合環境政策局環境経済課
内容:
(1)環境税の考え方
・ライフスタイルやワークスタイルの変革
・「環境立国」による環境と経済の両立
(2)目的
@京都議定書目標達成
6%削減のためには12%分の追加的な削減が必要。排出削減6.5%、森林吸収源3.9%、京都メカニズム1.6%
A規制を受ける者や大企業の自主的取組だけでなく、運輸・オフィスビル・家庭など皆が参加した裾野の広い温室効果ガス削減に向けた行動を促す
(3)使途:一般財源
(企業・家庭などの温暖化対策、森林の整備・保全、温暖化対策の減税財源に充てる。地方の温暖化対策のため、地方公共団体へ譲与)
(4)諸外国先進事例:ドイツでは年金保険料に充当
ノルウェーCO2税1991年〜、デンマーク888億円 CO2税1992年〜、オランダ4130億円一般燃料税1988年〜、 エネルギー規制税1996年〜、ドイツ1兆9100億円 環境税制改革1999年〜、イギリス1610億円気候変動税2001年〜。
分科会 みどり環境税
日時:4月16日(日)
会場:千葉経済学園短期大学部本館405教室
参加者:24人
目的:全国の地方独自課税の試みに触れ、森林環境税の動向や問題点と課題をお話いただく。また、千葉県における森林環境税の可能性を探り、里山保全への理解を深める第一歩とする。
基調講演:「みどりの保全のために 税に何が出来るか」
杉
田一陳氏 林業家、千葉県林業研究会会長 林業で生計を立てていくのは現在では無理。もっと多くの人が森林・林業に関心を持ち、国内での利 用をすすめるなど国内林業が採算がとれるようにしていくことが森林を守ることになる。
遠藤博之氏 酒々井里山づくりフォーラム代表 里山保全に取り組んでいるが、まちづくりの中で里山をどう位置づけていくか総合的な議論が大切で それを住民が参画して関わっていくことが必要だ。
小林 進氏 千葉県林務課 生業としての林業と里山保全それぞれの課題を考えていかなければいけない。
講師:諸富 徹さん 京都大学大学院 経済学研究科助教授
森林環境税は、14県で導入済み。3県で導入検討
税の効果@受益と負担の関係が住民に見えやすい
A森林保全事業の必要性認識の広がり
地方環境税の評価
*税形成過程は、県庁内で縦割りを超えた部局間協働が求められる過程であり、また地方政府同士が相 互学習しつつ制度を構築していくプロセスともなっている。「ボトムアップ型の政策形成」は、日本の地方 行政の歴史の中では画期的なこと。
*県境を越える行政課題について、相互に協力して広域的に対処する契機を提供したという意義を持つ。
*森林環境税をきっかけとして「参加型税制」あるいは「社会関係資本への投資としての地方環境税」とい う、新しい課税根拠論が提案されるようになってきた。「政策課税」の新しい側面に。
*政策手段だけでなく、新しい合意形成の仕組みが作り上げられつつある点に意義があり、地方環境税評価の一つの試金石となる
現状と課題
1.里山の荒廃や地球温暖化防止のために、森林環境税や環境税の検討がされているが、助成の対象が、「なりわいとしての林業」なのか「市民による里山保全」なのか、十分な議論が必要である。
2.温暖化効果ガスの吸収源として12%のうち3.9%を森林吸収に期待しているが、どのような状態の森林をCO2吸収源としてカウントするのか十分な議論がないようである。
3.増税に対する国民・県民の理解を得るのは課題が多い。
まとめ
森林環境税は千葉県もすでに検討していたということで、そのお話しを伺うことができよかったです。また、環境税が温暖化防止対策だけでなく年金保険料の負担軽減にも使われているという欧州の先進的な取組をうかがうことができ、大変参考になりました。分科会では、地方環境税の意義や課題のお話から大変意味深いものであることを知ることができました。会場に千葉経済学園をお借りしましたが、急なお願いにも関わらずご快諾いただきとても感謝しています。また、学園長さんのお話もとてもよかったです。
学習会がちょうど年度変わりの時期であったため、参加したいが仕事の都合がつかないという方も多く、開催時期についてはもう少し検討する必要があると感じました。3回とも大変充実した内容で、もっと多くの方にきいていただけたらと残念です。